研究内容
タンパク質間相互作用の理解と制御
研究内容
生物の細胞内では代謝反応を連続的に効率良く行うために、酵素同士が互いに相互作用して分子の受け渡しを円滑に行っていると考えられています。当研究グループでは、ポリケチド生合成や非リボソーム性ペプチド生合成における、キャリアータンパク質 (CP) と反応を触媒する酵素とのタンパク質間相互作用 (PPI)機構に着目して研究を行っています。CPは、80アミノ酸残基程度(分子量10,000 Da程度)の小さなタンパク質で、ホスホパンテテインによる翻訳後修飾を受けて活性型(ホロ型)となります。ホロ型のCPは、ポリケチド合成酵素 (PKS)や非リボソーム性ペプチド合成酵素 (NRPS)の反応中間体であるポリケチド鎖やペプチド鎖を運搬する足場 (scafforld) として機能しています。当研究室では、有機合成と酵素合成を組み合わせて、反応性官能基を結合させたホスホパンテテイン類縁体を調製する方法を確立しています。また、ホスホパンテテイン類縁体をCPに結合させる方法も確立しており、CPと各種酵素との間にPPIがある時にだけクロスリンク反応が進行することを見出しています。さらにクロスリンク複合体の構造解析から、PPIの様子をアミノ酸レベルで観測することに成功しています。現在は、PPIに関する理解を深め、変異導入により制御することで、天然型とは異なる組み合わせの酵素とのクロストークを可能にし、新たなポリケチドや非リボソーム性ペプチドを創出することを目指しています。
キーワード
タンパク質間相互作用、酵素機能構造解析、ケミカルバイオロジー
習得できる技術
大腸菌を用いた遺伝子組換え、タンパク質精製、タンパク質構造解析、有機合成
代表的な論文
ACS Chem. Biol. 2023, 18, 2343-2348.
ACS Chem. Biol. 2023, 18, 1398-1404.
Biochemistry 2023, 62, 17-21.
ACS Chem. Biol. 2022, 17, 198-206.
ACS Chem. Biol. 2020, 15, 1808–1812.
J. Am. Chem. Soc. 2018, 140, 7970–7978.