研究内容

未踏天然物のバイオ合成

研究の概要

生物による天然物の合成は、極めて合理的かつ効率的です。その物質生産システムを人為的に制御することができれば、枯渇性資源の使用を軽減した上で、複雑な化学構造を持つ天然物を単工程・高収率で合成できると考えられてきました。こうした背景下、我々のグループでは、生体触媒を利用した革新的バイオ合成法を確立し、本手法が化学合成を凌駕する汎用的合成法であることを立証してきました。その特徴は、1)全合成と同様に、全てのステップの基質/生成物/酵素を解明できること、2)最大600 mg/Lという高い収量、3)化合物の種類に依存しない汎用性などに集約できます。わずか10年の間に300種類以上の天然物をバイオ合成したという実績は、「ものづくり」という観点における本手法の重要性を示しています。この中には、数十種類の新規天然物も含まれており、新しい天然物の探索手法としても有効です。今後は、「つくった天然物を如何に活用するのか?」という点にも研究を展開するべく、天然物をベースとした新規機能性分子の創出、自然界における天然物の役割解明なども進めたいと思います。


キーワード

天然物、生物合成(バイオ合成)、環境調和


習得できる技術

天然物の単離・構造決定、クローニング、形質転換(宿主:大腸菌、放線菌、酵母、麹菌)


代表的な論文

PR-toxin:ACS Chem. Biol. 2024, 19, 861-865.

Phomoidride:J. Am. Chem. Soc. 2022, 144, 20998–21004.

Phialotide:Angew. Chem. Int. Ed. 2021, 60, 23403-23411.

Lolitrem:Angew. Chem. Int. Ed. 2020, 59, 17996-18002.