研究内容
未踏天然物のバイオ合成
【研究の概要】
生物がつくりだす天然物は、極めて効率的かつ洗練された方法で合成されています。もし私たちが、この自然界の「ものづくり」技術を人為的に再現し、自在に制御できれば、現代社会が抱える枯渇性資源の問題を解消し、環境にもやさしい手法で新しい分子を生み出すことができると考えています。こうした技術開発を通じて、人類の福祉向上に貢献すると同時に、持続可能な未来を切りひらくことができると考えています。
私たちの研究室では、このビジョンを実現するために、生体触媒を利用した革新的なバイオ合成法を開発しました。その特徴は、以下の3つです。
1)全合成と同様に、全てのステップの基質、生成物、酵素を明確にできること
2)最大600 mg/Lという高い収量
3)化合物の種類に依存せず、幅広い天然物に対応できる汎用性
この研究を進める中で、私たちは、この10年の間に300種類以上の天然物をバイオ合成することに成功しました。この成果は、私たちの手法が「ものづくり」の分野において重要な突破口となる可能性を示しています。さらに、バイオ合成技術は現在、世界中で注目を集めています。日本においても、第5次産業革命の中心技術として大きな期待が寄せられています(例えば...: 引用1、引用2)。
私たちは今後は、つくった天然物をどのように活用するか、また自然界における天然物の役割を解明することに加え、これらの知見をもとに新たな機能性分子の開発にも取り組みたいと思います。この技術は、将来の医薬品や環境にやさしい素材開発の基盤となり得る可能性を秘めています。あなたもこのプロジェクトに参加して、低エネルギー・持続可能な合成技術へのパラダイムシフトを促すことで、ものづくりの未来を変える挑戦に参加してみませんか?
【キーワード】
天然物、生物合成(バイオ合成)、環境調和
【習得できる技術】
化合物の単離・構造決定、遺伝子のクローニング技術、ゲノム編集技術
【代表的な論文】
Hirsutane: JACS Au 2025, 5, 740-746.
Eremophilane:ACS Chem. Biol. 2024, 19, 861-865.
Phomoidride:J. Am. Chem. Soc. 2022, 144, 20998–21004.
Phialotide:Angew. Chem. Int. Ed. 2021, 60, 23403-23411.
Lolitrem:Angew. Chem. Int. Ed. 2020, 59, 17996-18002.